経鼻経管栄養の実際

口腔外科では創部保護・栄養管理目的で胃カテ(マーゲン)を使用する機会が多い。

 

マーゲンの使用、管理法について知る限り述べる。

 

マーゲンには太さがあり、基本的には10Frが多い。

1Fr:1/3mm なので、10Frだと10/3mmが標準的な太さとなる。

 

患者さんの状況に応じて太さは前後(8Frや12Fr)を選択する。

 

 

胃カテの入れ方

挿入時の嘔吐による誤嚥を防ぐため、可能な限り上半身を起こした座位が望ましい。

嘔吐した時すぐ対応できるよう、膿盆と吸引カテーテルも準備。

 

 

胃カテにキシロカインゼリーを塗して潤滑性を上げ、下鼻道に沿うように顔面に直角の向きで胃カテを進めていく。

 

従って準備するものは

胃カテ

キシロカインゼリー

膿盆

吸引カテーテル

 

約15cm程度入れると咽頭に達して患者さんが違和感を生じたら患者さんに嚥下してもらう。

そのタイミングで胃カテを先に進めると気管内の誤挿入を防ぎ、消化管の方向へ進めることができる。

 

大凡50〜60cm進めると胃内に達する。

 

きちんと胃に挿入されているかを確認する方法は主に3つ。

1 胸写で胃カテ先を確認する。

基本的に胃カテ先は造影効果がついたものになっているので、それで確認する。

気管分岐部に干渉されていない(気管支に入らず交叉している)

横隔膜の正中を超えている(肺の下葉まで入ると非正中から横隔膜を越える)

途中でとぐろを巻いていない

事を確認する。

これは最も確実な方法だが、手間がかかる。

 

 

2 シリンジで空気を注入し、心窩部又は左上腹部(胃上)に聴診器を当てて気泡音を聴く。簡便にできるが気管内に迷入していても聴こえることがある。頸部や胸部に聴診器を当てて聴いた場合と比べたりして判断すると良いが、やはり確実ではない。

 

3 シリンジで吸引して、胃液(透明な黄色)が吸引できるかを確認する方法。唾液や空気を吸う場合は胃カテがとぐろを巻いて先端が頸部にあったり、気管内に迷入している恐れがある。とはいえ胃カテを挿入する時に絶食していたら吸えない事も多々あるので絶対ではない。

 

胃カテのFrと挿入の長さを測定し、カルテにメモしておく。

その位置で胃カテをテープで固定する。

胃カテはMDRPU(医療関連機器圧迫創傷)を生じやすいので、鼻部に発赤や挫傷がないか適宜確認し、生じた場合は胃カテのテープ固定法を変えるなど工夫が求められる。

特に鼻翼部に発赤しやすいので、鼻翼部に胃カテが接触しないことがまず重要。

 

手術直後は胃カテをウロバッグに接続し、ドレナージしている。

とはいえドレナージ用ではなく経管栄養用で細いマーゲンなので、あまりドレナージしない方がいい?

いつドレナージを辞めるのかはよく分からない。

 

 

胃カテの使用

注入前に胃カテの固定位置と聴診器による気泡音聴診による胃カテの留置位置を確認

 

シリンジを胃カテに繋いで胃の内容物を確認する。

 

栄養剤を投与する。

初回投与の流速は40ml/hで、400kcal程度から開始することが望ましいが、

口腔外科の患者さんは消化器症状があるわけではないので、もう少し流速を早く高容量投与している様子がする。

慣れてきたら200ml/h~400ml/hの速度で投与する。

その間は病室に拘束されるので、早く終わらせてほしいと言う人は500ml/hにする場合もあり、意外と大丈夫な人もいる。

 

栄養剤投与後は粉砕した薬剤を白湯に混ぜて胃カテ内を洗い、最後に白湯で胃カテを洗い流す(フラッシング)。

 

 

栄養剤の流速を早くしたり注入量が増えると空腸の対応できる浸透圧を越えて下痢になる。

従って、下痢になった時は下痢止め剤の使用より先に、栄養剤の注入速度を遅くすることが望ましい。

 

栄養面で考えること

多くは栄養士さんに相談すれば良いが、相談するためにある程度の前提知識は必要。

なんといっても定期的に体重を測定し、栄養量が適切かを判断する。

また、ミネラルが不足することがあり、特に経腸栄養剤はNa含有量が少ないため、定期的な採血で低Naが認めれれば、胃カテから食塩水を投与しよう。

人が必要とする必須微量元素にFe,Zn,Moなどあり、健常な人は特定の食物より摂取しているが、経管栄養剤だとカバーしきれないこともあるので長期間の管理には留意する。

食物繊維は腸内細菌の正常化により経管栄養で最大の合併症である下痢や便秘に寄与するため、使用する栄養剤にどの程度含まれているか見ておくと良い。