採血・ルート確保について

採血・ルート確保は患者さんのラボデータ確認や投薬など、全身管理をする上で必須の手技である。

 

 

 

準備する物

アルコール綿

 

 

駆血帯

 

ロールシーツ

 

止血テープ

 

ホルダーつき注射針(真空管採血)

 

 

針、シリンジ、分注管(シリンジ採血)

 

 

僕はシリンジ採血の方が馴染みがあるので、シリンジ採血について

 

簡単な流れ

 

準備

使用できない血管(シャント、人工血管、腋窩リンパ節郭清側)がないか、アルコールアレルギーがないか確認

予め針とシリンジを連結させ、シリンジ内の空気を押し出しておく

 

 

血管の選択

弾力があって太く真っ直ぐに走行している血管を選択し、駆血帯を巻いて血管を怒張させる

 

 

Point
  • 駆血帯を筋肉がある位置に40mmHg程度のきつさで巻く事で静脈だけを遮断できる
  • 駆血帯を長時間巻くと血液凝固しやすくなりデータ値が狂うため、駆血帯を巻く前に大まかでよいので血管を選択しておくと良い
  • 駆血帯を長時間巻いていると静脈が虚脱する事があるので、素早く
  • 駆血帯は採血部位を5cm上部に巻く。強く巻きすぎると動脈の流入も抑えられて怒張が不十分になるし、弱く巻いてしまうと静脈血が流出してしまうので、同様に血管の怒張が不十分となる。
  • 駆血帯を巻いても怒張しない場合は、駆血帯より末梢側に血管の分枝が有る場合があるので、駆血帯を末梢側に巻き直すと良い。
  • 肘窩部内側の尺側皮静脈と手関節部の橈骨皮静脈は神経が走行しているため避ける
  • 血管の弾性がない・細い場合は穿刺時に血管が逃げる可能性があるため、少し勢いをつけて穿刺させる
  • 逆血を一度は確認したが再度逆血が来なくなった場合は血管を穿通している可能性が高いため、針をゆっくり引いて、逆血がくる場所を探す
  • 穿刺しても逆血が来ない場合はギリギリまで針を戻し、再度狙って針を進める。

 

消毒

アルコール綿又はクロルヘキシジンで穿刺部周囲を消毒

 

穿刺

針先のベベルを上に向け、皮膚を末梢側に引っ張りながら穿刺する

逆血がきたら外筒を1番奥まで入れ込む

 

Point

血管が浅い場合は穿刺角度を小さく、深い場合は穿刺角度を気持ち大きくする。

針先が血管内に入るイメージをしながら、穿刺する針の長さを予想し、その分だけ末梢側より穿刺する。

 

採血

穿刺部がずれないように片手で固定しながらもう片方の手でシリンジを引き、静脈血を採取する

十分な量の血液を採取したら駆血帯を取り外し、シリンジを外す

シリンジを外したら針先を抜去し、テープ等で止血する

 

Point

強くシリンジを引っ張ると溶血してK値が高値になるなど生じてしまう

穿刺部を触ると不潔になるため、シリンジと皮膚の間に指をいれるように固定する

 

 

分注

分注ホルダーを用いてシリンジ採取した血液を採血スピッツ(採血管)に分注する。

採血スピッツはデータ毎に異なるので、欲しいデータが増えるほど必要なスピッツの数が増え、必要な採血量も多くなる。

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分注するスピッツにも順番がある

シリンジ採血は凝固しやすいため、絶対に凝固させたくない凝固(黒)スピッツから始め、凝固が許容される生化学(茶)を最後にすれば良い。

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採血上手くなろう

 

 

Q.翼状針(シリンジ、真空ホルダー)と直針シリンジ採血の違いは

翼状針は安全装置がついているので針刺しリスクが高く、神経損傷のリスクも下がると言われているので、基本的には直針より翼状針が推奨されるが、其々の特徴があるので、その特徴に応じて使いこなす事も必要である。

 

直針のシリンジ採血:低コスト

       ホルダー採血より処理時間が短くなる

翼状針のシリンジ採血:血管圧が弱くてホルダー採血では困難な場合やホルダー採血に対応し

           ていない採血管の場合でもシリンジ採血であれば可能になる

翼状針のホルダー採血:分注の手間が不要なので、多くの採血管を要する際に適する

           コストが高い

 

翼状針のホルダー採血が推奨されている

 

Q.採血禁忌の腕は

・乳房切除側(リンパ節郭清側):感染リスク高い

・炎症、感染している腕:感染増悪リスク高い

・シャント予定、中の腕:駆血帯や針刺しによってシャントに負担がかかり潰れて透析できなくなる

・麻痺側:血管外漏出が生じても疼痛がないため危険性が回避できない

 

Q.血管を怒張させる工夫は

・軽く手を握ってもらう

・温める

・末梢側から穿刺部に向けてマッサージする

・穿刺部位を人差し指と中指で叩く

 

手を強く握らせたりパンピング動作を行う行為はKが偽高値になるので避ける

 

 

Q.採血管の順番は

point

・キャリーオーバー(前の採血管の添加物を含んだ血液がその後の採血管に混入すること)を避

 けるために順番が決まっている

・初めの血には組織液が混入している

・凝固用の黒スピッツは規定量の採血が必要である

・シリンジ採血は時間が経つと凝固する

 

真空ホルダー採血の場合

1.生化:組織液混入を防止できるから

2.凝固:1番目に採取するとチューブ内に残る採血分だけ不足する

3.血沈

4.ヘパリン入り

5.EDTA入り(血算)

6解糖阻害剤入り

7.その他

 

シリンジ採血の場合

1.凝固:凝固の影響を最も受けるため一番最初にする

2.血沈

3.ヘパリン入り

4.EDTA入り(血算)

5.解糖阻害剤入り

6.その他

7.生化学

 

キャリーオーバーを避けるためには

・採血管の順番を順守する

・(ホルダー採血時)採血時に転倒混和させない

 →添加物を含んだ血液が後の採血管に混和するから

・静脈に穿刺後はホルダーを穿刺部より下にして、採血管も下向きにして混和を避ける

・混和はホルダーから採血管を抜去してから5-6回転倒混和させる