歯科医師・口腔外科医が学ぶ 心エコーについて

準備

 

心エコーを行う際は患者さんを左側臥位にして、Drが患者さんの右側に立ち、右手でプローブを持って操作する事が望ましい。

僕が研修した科では仰臥位で普通に撮影していたが、画像が上手く描出が出来ないことも良くあり、そういう場合は左側臥位にして撮影していた。

左側臥位にすると肺に含まれる空気の影響が減るから見やすくなるらしい。

 

撮影方向

赤(長軸・短軸像)→緑(四腔像)→青(下大静脈) の順で観るのが一般的だと思うが、順番に決まりはなさそう。

左室長軸像と左室短軸像が大事。

左室長軸像が正常であればかなりの確率で重症心疾患はexcludeでき、左室短軸像も正常であれば、その確率は更に高まる。

その後に、限局した壁運動異常を見逃さないためには、左室短軸像を心基部から心尖部までスキャンする。そこで異常像を発見したら、他断面からも確認する事が重要である。

四腔像では左右の心房・心室形態のバランスを観察できる。

下大静脈は直径を計測して基準値と比較することで右心系の循環うっ血や循環量減少の有無を鑑別できる。

 

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左室長軸像(胸骨左縁長軸断面像)

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第3・4肋間にプローブの突起(インデックスマーク)を右肩に向けることで、左図のようなおなじみの画像が観れる。

 

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描出のコツ

左室内径がもっと大きくなるように
心室中隔と大動脈前壁が同じ高さになるように

 

観察ポイント

心収縮の亢進/低下

どの壁も収縮しているか(Asynergy)

大動脈弁と僧帽弁はよく開いているか

大動脈弁と僧帽弁の閉鎖時に逸脱はないか

左心房(LA)、大動脈(AO)、右室(RV)の径が同じか

 

 

傍胸骨左縁短軸断層像

長軸断層像でのプローブを時計回りに90度回転させて描出させた像

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どの壁もしっかり動いているか(Asynergyがないか)、心室拡大がないか、弁の狭窄や閉鎖不全がないか、を確認する

大動脈弁レベル

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僧帽弁レベル

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乳頭筋レベル

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観察ポイント

左室と右室のサイズ(D-shape)  

駆出率(EF)

 

心室のサイズは正常なら左室>右室だが、右室が拡大・肥大すると心室中隔が左室側に湾曲し、左室の輪郭がDのようになる。

血栓塞栓症の典型的所見で、突然死に至る恐ろしい病気なので必ず見た方が良い。

 

駆出率とは左室に溜まった血液のうち、何%の血液を送り出せているか(ポンプ能力)の指標

簡単な計算方法として、(1-  左室収縮期容量/左室拡張末期容量)×100%

正常値:60〜80%だと

50%以下だと収縮不全、つまり心不全ということになる。

正確なEFを見るためにはCT・MRI・左室造影検査を用い、別の計算式で求める。

 

心尖レベル

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心尖部四腔断面像

 

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観察ポイント

心収縮時に腔が均一に収縮/筋が均一に肥厚するか

 

肝臓越しにIVC観測

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観察ポイント

IVC径

呼吸性変動の有無

 

下大静脈(IVC)は右房に入る2〜3cm尾側で径を計測する。

IVCは中心静脈圧(CVP)に比例しており、循環変動の容態を確認できる。

健康な人のIVC径は12mm〜21mmで、呼吸に伴う血液量の増減を反映することで最大径が呼吸と一緒に変動する(呼吸性変動)がみられるはず。

循環血流量が増大していたり右心不全があると末梢血がパンパンに膨らんでいるため、最大径が21mm以上になったり呼吸性変動が低下・消失する。逆に、脱水傾向の場合は末梢血がカラカラなのでIVC径が10mm以下・潰れて虚脱している像が伺える。

 

 

その他で心エコーから読み取れる事

LVDd(左室拡張末期径)、LDSs(収縮末期径)

 

左室内径短絡率(FS)

左室容積が拡張期から何%収縮したか

LVDd,LDSsを参考にして計算する