口腔外科に限らず日常生活においても、目の前の患者が急変する場面に遭遇する事がある。その時はBLSに準じた対応をして救急科の先生にpassする訳だが、救急科の先生はその後に何を考えながら対応しているのか?
余りにも疾患の範囲が広すぎて内容の統一性が失われてしまうので、悪までも概論として、救急科で研修した経験を踏まえて説明していく。
救急科の特徴
救急科の特徴として、患者が到着するまでに患者の背景や病状などが詳細に分からないにも関わらず、早急な診断と治療が求められる点である。
患者が救急科へ来るまでに
急変した患者が院内/院外で発見されると、救急科へ連絡があり、搬送される。
その際にバイタル・主訴・簡単な外表所見は伝えられるが、詳細は不明なまま搬送となる。
その情報を元に、必要となる医療資源を考え、早急に対応できるよう準備しておく。
患者が救急科に来たら
ABCDE(First survey)
まず最初の2~3秒で患者が現在どのような状態であるかを確認する。
僅かな時間で患者を見て聞いて触る。
これら必要な診察内容の頭文字を取ってABCDEと呼ばれている。
A:Apperance (見た目)
A:Airway (気道)ex.会話可能か 口腔内に異物貯留がないか
B:breath (呼吸)ex.胸郭の挙上に左右差がないか 呼吸は努力性か
C:circulation (循環) ex.血圧は基準内か 脈は触れるか
D:dysfunction of CNS (中枢神経障害) ex.対光反射はあるか 意識障害はあるか
E:Exposure (体表) ex.外傷はないか 発熱はないか
ABCDEに異常所見あれば即ち生命維持に問題を来たす恐れがあるので、それに対して治療を行う。
例えば、Aについて気道閉塞が認められれば下顎挙上や挿管を行う。
BについてSpO2低下や努力性呼吸があれば、酸素投与や人工呼吸器の装着を行う。
Cについて血圧低下や脈が触れない様子があれば輸液負荷やエフェドリン投与を行う。
ポイント
・上から順に
上から順に治療していくことが重要である。
いくら酸素投与(Bに相当)や輸液負荷(Cに相当)を行なっても気道閉塞があれば生命維持は担保できない訳で、必ずAから順番に加療を続ける。特にABCを終えてからDEに進むことを心がける。
・何度も繰り返す
また、最初にABCDEに異常所見がないことを確認して診療を先に進めても、適宜元に戻ってABCDEが安定していることを留意することが重要である。
ABCDEに問題がないことを確認すれば、とりあえず今すぐに死ぬことはないため、問診や追加の検査を行う。
OPQRST・SAMPLE
OPQRST,SAMPLEはいずれも病歴聴取で必要となる項目の頭文字を取ったものです。
O:onset(発症様式)
P:Pallative/Provocative(増悪・寛解因子)
Q:Quality/Quantity(症状の程度・質)
R:Region(症状の範囲)
S:Severity associated symptom(随伴症状)
T:Time cource(時間経過)
S:Symptom(主訴)
A:Allergy
M:Medication
P:Past medical history(既往歴)
L:Last meal(最終摂取)
E:event(現病歴)
その他診察・検査
上記を踏まえ、疑われる疾患を挙げる。それらの疾患に対し、
可能性が高い疾患に対しては確定させる検査
可能性が低い疾患に対しては否定させる検査
を行う。
漠然としているのでここで具体例
数秒間の失神で救急科を受診した患者
失神は3種類
・心原性失神
・神経調節性失神(迷走神経反射)
・起立性低血圧
に分類される。
殆どは迷走神経反射か起立性低血圧であるが、心原性であれば今後死亡する可能性があるため、心原性でないことを否定することが重要である。
心原性でないことを示すには何を行えば良いのか?
まず、心原性失神であれば直前に動悸や胸痛を伴う事が多いので、それについて聴取する。家族歴や既往歴で心疾患がないかも大事。
ECG(心電図)や心エコーで不整脈(房室ブロック、心室頻拍など)や心拍異常の否定は必須であろう。
上記診察・検査を行って心原性が否定できたら一安心。
あとは仰臥位の患者を坐位まで起こして血圧を計り直そう。収縮期血圧が20mmHg以上低下したら起立性低血圧だろう。
こんな感じで患者の対応を進めていく。