ドレーン管理について

口腔外科の診療で口腔内や頸部にストローのような物が留置されていて、ストローの先のバッグの中に血液が入っている様子をよく見かける。

歯学部の学生は歯の疾患ばかり勉強するため、どの学生も初めて口腔外科に行って衝撃を受ける理由の1つだと思う。

 

今回はドレーン管理について考える。

 

ドレーンとは

体内に血液や膿・滲出液等が貯留すると、感染や圧亢進を引き起こしたり、隣在組織を圧迫し、場合によっては致死的になる。従って、リスクがある場合はそれらを排出する必要がある。

体内に貯留する血液や膿・滲出液などを体外に排出させる管をドレーンと呼び、排出することをドレナージと呼ぶ。

 

口腔外科領域だと、下顎骨切り術や頸部郭清術・膿瘍などでよく使用する。

ドレーン管理の種類

開放式or閉鎖式

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ドレーンの排液先が外界に解放されているか、排液バッグに接続しているか に分類される。

開放式

ドレーン先が外界に開放されている。先端をガーゼなどで軽く圧迫しておくことも多い。

創部からストローが飛び出ているだけなので患者さんへの負担や移動制限は少なく、排液の効率も良いが、逆行性感染のリスクが高くなる。

口腔外科領域では、蜂窩織炎や膿瘍で開放式ドレーンをよく用いる。

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閉鎖式

ドレーン先が排液バッグに接続され、排液がバッグに貯まるようになっている。

創部からドレーン先までいずれも外界から遮断されているため逆行性の感染リスクが下がる。

また、排液がバッグに溜まるので排液を観察できたり排液量を換算できる。

一方で、バッグの影響で患者さんの移動制限を来たす。

口腔外科領域では、下顎骨切り術や頸部郭清術などでよく用いる

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半閉鎖式

パウチを用いる。口腔外科では中々使わないと思う。

 

 

ドレーンの種類

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フィルム型

代表的なものでペンローズ型ドレーンが有名。

柔らかいので患者さんへの負担は小さいものの、粘稠な排液だと特に内腔が潰れやすくなる。

入れ替えや洗浄が困難である。

口腔外科領域ではペンローズ型をよく用いる。

 

チューブ型

比較的硬くて丈夫なので粘稠な廃液でも内腔が潰れない。

洗浄しやすく入れ替え可能。

 

サンプ型

複数の内腔を持ち、一方の空から外気を取り入れ、他方から体液を排出する。

持続洗浄も可能であり、廃液量が多い場所に有効。

 

ドレーンの原理

ドレーンの吸引作用は受動的or能動的に分けられる。

 
受動的

外力に頼らず、毛細管現象やサイフォンの原理といった自然科学の原理で吸引する。

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能動的

廃液バッグに付属した吸引器が廃液バッグに陰圧をかけて吸引する。

 

ドレーン装着

口腔外科領域ではJ-VACドレナージシステム(ペンローズドレーン、持続吸引廃液バッグ)を使う機会が殆どである。

J-VACドレナージシステムの装着

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ドレーンの固定

創部にドレーンを留置し、長さを測定する。

その位置でループ状に縫合して固定する。

 

吸引廃液バッグの装着

ドレーンの先端を廃液バッグのコネクターに接続する。

下方のフラップ部を上方に折り曲げて陰圧をかける。

吸引していることを確認する。

吸引できない場合は創部が開放されていて陰圧がかかっていなかったり、ドレーンのどこかが障害・閉塞している可能性など考えられる。

 

ドレーンの周術期管理

周術期上でドレーンから分かることは多い。

一方で、人工物を体内に留置しているため、適切な管理が求められる。

 

ドレーンの留置・固定

ドレーンを創部に留置すると、留置した周囲から滲出液が漏出するため、Yガーゼをドレーン固定部に留置することが多い。

 

 

また、患者が移動する際にドレーンが邪魔にならないように、ドレーンを患者の体幹に固定する。体幹にドレーンを固定する時は、まず土台となるテープを貼り、その上から少しドレーンを浮かせながら巻き付けるような形で固定することで、テープの接着面積を広げ、皮膚への損傷を減らすことができる。

使用するテープは角を丸めることで、皮膚の損傷を減らせると言われている。

 

排液量の測り方

排液口を開いて空気を入れ、排液バッグのメモリから確認できる。

少量であったり正確に測る場合は排液口から排液をコップに注ぎシリンジで計測したり、計量系で重さを測って計測する。

 

排液後の再起動

空気が入った排液バッグの正中を指で押さえ、音が鳴るまで押す。これで空気が出ていく。

底部のフラップ部を逆に折り曲げてロックする。

ここで排液口を締める。

底部のフラップ部を上方に折り曲げて最吸引する。

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廃液の評価

色:血性・淡血性・淡黄血性・淡黄色(漿液性)

淡血性であれば出血が落ち着いてきていることを示

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性状:漿液性or粘液性

漿液性であれば安定している

粘液性であれば炎症や組織の混入などが疑われる

 

ドレーンの管理

  • 閉塞することが多いので、手や専用器具でドレーンを流す(=ミルキング)を行う。特に血性の排液がある場合は積極的に行う。
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  • テープかぶれやドレーン挿入部の発赤がないか見る
  • 逆流防止のため、ドレーンは創部より必ず下の位置に置く。