歯科医師・口腔外科医が学ぶ救急学 Circulation異常所見への介入

First surveyであるCに異常所見を認めた際の介入を考える。

 

Cの異常所見

Cの異常所見としては徐脈頻脈・血圧の低値高値などがある。

 

 

循環の原理

1.酸素運搬量

動脈血酸素含有量(末梢に酸素を送れる量)の式は

1.34\cdot Hb\cdot S_{a}O_{2}+0.003\cdot P_{a}O_{2}
で示される。
Hb,SaO2,Pa02の係数は同次元であるため、上記式は
1.34\cdot Hb\cdot S_{a}O_{2}
で近似される。
 
従って、酸素の運搬量は
心拍出量・Hb・SaO2 に依存する。
 

2.酸素消費量

酸素消費量は
13.4\cdot Hb\cdot \left( S_{a}O_{2}-S_{v}O_{2}\right)
S_{v}O_{2}=混合静脈血酸素飽和度)
であるので、
酸素消費量=心拍出量・13.4\cdot Hb\cdot \left( S_{a}O_{2}-S_{v}O_{2}\right)
となる。

3.抹消の灌流

血液内に酸素が含有されていても、抹消まで血圧が保たれていなければ、抹消まで血液が巡らないので十分に運搬できない。
 
圧差 ΔP=動脈圧(MAP)-静脈圧(CVP) が大きいほど末梢に多くの酸素を渡せている。
特に、臓器へしっかり還流できているかは入り口=MAP が重要で、目安として65mmHg以下だと臓器の灌流不全による臓器不全が引き起こされる。
つまり、MAPを凡そ65mmHg以上になるよう安定させることが求められる。
 

循環の改善

では循環不全があった場合はどう対応すればいいか?

 1.Hb,SaO2の適正化

 1の酸素運搬量を増加させるには、HbとSaO2値の改善が必要となる。

Hbが低値であれば輸血し、SaO2が低値であれば酸素投与を行う。

 

2.心拍出量の適正化

 1.の酸素運搬量の増加/2.の臓器機能の顕然化 のために、血液を送り出す心拍出量が適正化される必要がある。

 心拍出量=HR×1回拍出量(stroke volume:SV)

 1回心拍出量は

・前負荷(血管内volume)

・心収縮力

・末梢血管抵抗=血圧

の適正化が必要。

 

従って、

前負荷が小さい(血管内volumeが少ない) → 補液

心収縮力が小さい → 強心薬

を行う。

 

3.MAPの適正化

 3.灌流量の適正化

灌流量を適正化させるためには上記の血管内volume・心収縮力に加え、抹消血管抵抗を改善させる必要がある。

 抹消血管抵抗を測定するデバイスはないので、抹消血管抵抗の低下が疑われたら血管収縮薬(NAdなど)を使用する。

 

 

 

ショック

特にtopicとなるのがショック状態のとき。

ショックの定義は”抹消組織の酸素供給と需要の不均衡”である。

臨床所見ではショックの5P が有名。

ショックの5Pとは

Pallor(顔面蒼白)

Perspiration(冷汗)

Pulseless(脈拍触知不能)

Prostration(虚脱)

Pulmonary insufficiency(呼吸不全)

のことです。

勿論これだけではなくて、CRT延長や網状皮斑、ツルゴールの低下などの所見を踏まえて総合的に診断する。

 

ショックの分類と対応
1. 循環血流量減少性ショック
 出血や脱水 →
 IVC:虚脱 心臓:頻脈、過収縮 抹消血管抵抗:上昇
→輸液や輸血
 
2. 心原性ショック
 IVC:拡張 心臓:収縮低下 抹消血管抵抗:上昇
 →補液、強心薬
  心機能が悪いので本当は補液をしたくないが、灌流を維持するにはやるしかない
 
3. 心外閉塞性ショック(心臓は元気だが、他の要因で静脈血が心臓まで戻ってこない)
 心緊張性気胸、肺血栓塞栓症など
 IVC:拡張 心臓:過収縮 抹消血管抵抗:上昇
 →補液(D-shapeに注意しながら)、閉塞の解除🇲🇵
 
4. 血管分布異常性ショック
 アナフィラキシー、敗血症まど
 IVC:虚脱 心臓:過収縮 抹消血管抵抗:低下
 →補液、昇圧
 

敗血症

敗血症とは感染症によって重篤な臓器障害が生じる状態のこと。

 

敗血症性ショックとは、急性循環不全で代謝異常が亢進され、ショックを伴わない敗血症と比べて死亡の危険性が高まる状態のこと。

大まかな定義としては

MAP≧65mmHgを保つために補液や血管収縮薬を使用している

Lac≧2mmol/L

 

対応としては

リンゲル液の補液で循環を適正化

NAdによる昇圧で灌流量を適正化

まずは広域抗生物質を投与し、培養提出してde-escalationを進める