口腔外科における栄養投与経路の適応

よく医療現場で患者さんを従事すると、教科書で何度もみかける下図が重要である事を痛感する。

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腸管を使わないと腸管が萎縮し、腸内細菌や腸管免疫の低下などが生じる。

全身の臓器は相互に作用しているのは有名な話であり、使える臓器は使うに越したことがない。

従って、イレウスといった腸管の問題がないのであれば、腸から栄養剤を使用した方が良い。

 

腸管が使えない場合は末梢or中心静脈より栄養を補給する必要がある。

PPNとは前腕の末梢静脈にルートを留置し、点滴で栄養を投与する。

TPNとは頸部や胸部、上腕部からカテーテルを入れて上大静脈まで進め留置(CVポート)し、点滴で栄養を投与する。

TPNだとカテーテル感染や刺激による血栓形成、なにより侵襲の大きい処置となってしまうため、PPNの方が良い様に思われるが、

TPNは2000kcal近くまでエネルギーを投与できるのに対し、PPNだと高々600〜1000kcal/d程度しか補給できない。

患者さんに投与する1日水分量はせいぜい2000ml程度で、この液体量で高カロリーの輸液剤を抹消静脈に投与すると、

浸透圧が高すぎて血管痛や静脈炎になるからである。

以上より、短期間(大まかに10日間が目安?)であればPPNでもよいが、長期間の管理が必要ならTPNが望ましい。

 

 

勿論上の考え方は揺るがない概念だが、口腔外科医に限るともう少しアレンジできるのかなと思う。

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腸管が使えない患者さんを口腔外科が主科として対応するって早々遭遇しない気がする。

口腔外科の特徴として、

1 創部が口腔内

2 摂食・嚥下機能の低下

が挙げられる。

 

1について

口腔外科では創部が口腔内に生じることが多く、術直後から傾口摂取を開始すると飲食物が創部に流入するため、感染のリスクが疑われる。

エビデンスがあるのか論文で調べてもヒットしなかったけど、確かに理論上は叶っている気がする(耳鼻科とか食道外科はどうしてるんだろう)。

抜歯やプレ抜程度なら術直後から経口摂取を行うことが多いが、骨折やtwo-jawなど術後の感染が特に留意するべき症例では非経口摂取にて対応することがある。

 

2について

悪性腫瘍に対する切除術や炎症や骨折による開口障害や疼痛により、摂食嚥下機能が低下する患者さんが多い。

そのような患者さんは経口摂取できない。

 

1、2のような患者さんには胃カテか末梢静脈栄養を行うことが殆どである。

創部保護もしくは非経口管理が長期間に及ぶ場合はエネルギーや腸管機能の観点より胃カテが望ましいが、短期間であればPPNで十分であろう。

当科だと

頸部郭清を伴う悪性腫瘍の手術やtwo-jawなどでは胃カテ

プレート抜去などではPPN

抜歯術などでは術直後から経口摂取開始

の印象です。