歯科医師・口腔外科医が学ぶ 造影CTと腎機能について

患者さんに造影CTを撮影したい時に腎機能が悪く、「撮影可能なのか?」と思い悩む場面が多い。

 

造影CTの禁忌について口腔外科医は理解しておかなければならないため、簡単に記載する。

 

造影CTを撮影する際に留意する点は

ヨード過敏症の既往(禁忌)

重篤甲状腺疾患(禁忌)

ビグアナイド系経口血糖降下剤(禁忌)

気管支喘息(原則禁忌)

腎障害(原則禁忌)

である。

 

ここで議論になるのが腎障害について

 

 

なぜ造影CTを使用してはいけないのか

 

そもそも、なぜ腎機能が低下した患者に造影剤を使用してはいけないのか一言で表すと、CIN(contrast-induced nephropathy: 造影剤腎症) = CI-AKI(contrast-induced acute kidney injury 急性腎障害)になるからである.

仮説としては

造影剤が直接的に尿細管細胞のアポトーシスや壊死などを引き起こす

血管作動性物質を阻害する事で糸球体の血流を悪化させ、活性酸素が生成されて腎障害をもたらす

血管収縮により腎臓内の酸素血流量が減少し、尿細管に毒性効果をもたらす

等々が謳われている。

 

従って、腎機能が低下した患者さんに造影剤を使用すると、それが契機となってAKI(急性腎障害)になる場合がある。

 

この場合、造影剤使用後の2〜4日後をピークにsCr値が高値になり、急性に腎機能が低下する。多くの場合は14日以内に造影剤使用前まで腎機能が回復するが、まれ(1〜25%、諸説あり)に腎不全が進行し続け、血液透析が必要となるまで悪化する事がある。

 

 

腎機能が低下した患者に造影剤は使用してはいけないのか

 

ではeGFRが低い場合は絶対に使用してはいけないのか、というとそういう訳ではない。

BPを使っている人でも抜歯しないといけない人は抜歯するように、造影剤を使用した方が良い場合は腎機能が低下していても使用する。

 

まず、最近のガイドラインだとeGFRが30ml/min以上であればAKIのリスクは低く、30ml/min以下であれば患者さんへの説明や適切な予防策が必要と記載されている。

だが最近の研究だと、そもそもeGFRが30ml/min以下でもリスクは低いという発表もあるが、結論は出ていないので保留で。

 

そもそも、患者に造影CTを使用して怖いのはCINだが、CINになる要因は腎機能の低下(CKD)だけでなく、DMや高齢、その他薬剤の使用などの有無が絡んでくる。

 

まとめると、

患者さんに造影剤を使用する場合は急性腎不全のリスクを引き起こす恐れがあり、その1つのリスク因子として腎機能の低下(eGFR<30ml/min)があるが、それ以外にもDM、高齢、内服薬、造影剤の種類などもあるため、上記のリスク因子によるAKI発症リスクと造影剤使用の必要性を照らし合わせて判断する必要がある

が正しい返答になる。

 

 

AKIになるリスク因子は

CKD,eGFR

DM

HT

メタボ

脱水(腎灌流量が低下)

内服薬

 

問題は内服薬だと思うが、

そもそも薬剤性腎症になる薬剤の1位は造影剤ではなく、

1位;NSAIDs

2位;抗腫瘍薬

3位;抗菌薬

で、4位が造影剤らしい

つまり、nsaidsやケモ、抗生物質の使用もリスク因子となる。

 

 

CINの予防法

リスクはあるも造影剤を使用したい場合はどうするかというと、

腎毒性のある内服薬を中止・変更

造影剤使用の6〜12時間前から12〜24時間後まで生理食塩水を1ml/kg/hで補液

低浸透圧非イオン性ヨード造影剤の使用

などが挙げられる。

 

簡単にできることとして、造影剤使用前後で其々500ml程度の生理食塩水をdivすることで造影剤を希釈したり、糸球体の環流量を増やして酸素化を改善させる方法が一般的である。

 

その他の原因に伴うAKIの時は造影剤を使用していいのか(余談)

これは本当に余談だが、脱水や外傷、手術に伴う腎臓の灌流量低下でAKIを呈している場合に造影剤を使用していいのか、という論点がある

 

つまり、脱水や手術などによる一時的な腎不全を呈している患者に造影剤を使用する場合は、関係なく造影剤を使用していいのか、腎機能が回復するまで待ったほうがいいのか、という話

 

結論から言うと、必要性が高いのであれば、予防策を講じた上で造影剤を使用しても大丈夫、ということらしい。